配達で本社や足立、葛飾方面から物流センターへ帰る際、頻繁に首都高3号渋谷線を利用しています。
池尻出入口の前を過ぎると、前方に大きな看板が見えてきます。元ヤクルトスワローズの温厚な表情をした古田敦也さんがガッツポーズをとった写真を見ると、「今日もとりあえず無事に帰れそうかな」と少し安心します。
古田さんを横目に見ながら通り過ぎると、現在はすでに新しいものに変えられていますが、一昨年亡くなられた俳優の梅宮辰夫さんが黒いジャケットを着て腕を組んだ、骨董店の看板が見れました。その姿が見えてくるたびに、「やっぱ梅宮辰夫かっこいいな」と感心したものでした。
梅宮さんはいうまでもなく日本が誇るスターであり名優でしたが、自分が学生の頃は家族のスキャンダルの矢面に立って庇う姿や料理上手なタレントのような姿ばかりが目立っていて、つくづくもったいないなと思いながらワイドショーなどを観ていました。
俳優梅宮辰夫の底力と凄まじさが鮮烈なのは、なんといっても映画『仁義なき戦い』シリーズです。
記念すべき第一作目『仁義なき戦い』の若杉寛役、三作目『代理戦争』、四作目『頂上作戦』での岩井信一役はいまでも忘れられません。
もちろんこの二役は梅宮さんの俳優としての膨大なキャリアにしてみれば小さな役にすぎないかもしれません。しかし歯切れのいいセリフ回しと圧倒的な存在感は、小林旭さんと並んで圧倒的な光を放っています。
またこのシリーズほど人間の私利私欲の縮図を描き切った作品は無いと思いますし、手持ちカメラが生む迫力が圧倒的で、数々の名セリフも生まれました。
とにかく主役の菅原文太さん以下、スター級の俳優からセリフすらない脇役の人たちまで全ての出演者が主役のような、画面が熱い作品もそれほど多くはないと思います。
制作されてからもう少しで50年にもなろうとしていますが、いまだに観るたびに熱い思いにさせられ、体に力がみなぎり目つきも変わってきます。
オールスターといってもいい出演者のかたたちも、すでに鬼籍に入られたかたが多いですが、深作欣二監督をはじめ、俳優、スタッフがまだまだ若かった、あの時代にしか撮れなかったこの最高のシリーズをまだ観ていない方は、「古い昭和の映画」と毛嫌いせずに、ぜひ観ていただきたいです。