この間のお盆休み、登戸の藤子・F・不二雄ミュージアムに行ってきました。夏休みということもあり、雨にもかかわらず沢山の家族連れで、すごい盛況でした。配達でミュージアムの前はよく通りますが、実際に訪れるのはこれが初めてです。
率直にいって、心から楽しめました。そもそも漫画の生原稿や原画などはなかなか見る機会がありません。ましてや自分が成長する過程で、欠かすことのできない作品の生みの親である、藤本先生の描かれた原稿ともなれば絶対に見たい!
1階、2階の展示品は2時間近くかけてみました。一枚、一枚、顔を近づけて、先生の気迫を眼に焼き付ける思いでジックリ見ました。どの原稿も、前を立ち去り難いくらいです。
2階展示室では、月刊誌コロコロコミック創刊40周年を記念して、全バックナンバーをはじめ、コロコロコミックと藤子作品の歩みを展示してあり、毎月母にねだって買ってもらって読んでいた、小学生だった80年代のバックナンバーは懐かしかったです。また、先生のライフワークともなった、『大長編ドラえもん』シリーズの生原稿の展示は圧巻でした。自分も大好きな、映画『駅馬車』などの西部劇から、絵の構図などのヒントを得ていたことも改めてわかり、もう一度読み直そうと思いました。
展示室ははっきりいって大人のための至福の空間です。自分の幼少時代のときの思い出と重ね合わせて、先生の原稿や年表などを鑑賞できるというのは、大人の特権というべきものでしょう。
しかし、実をいうと藤本先生の作品は、ドラえもんに関していえば、大長編の映画は小学生のとき、よくクラスメイトと鎌倉駅前の映画館に観に行きましたが、原作の漫画のほうは熱心に読んでいません。自分が熱中したのは、『キテレツ大百科』、『エスパー魔美』、『TP(タイムパトロール)・ぼん』、『S・F短編集』など、少し大人向に描かれた作品でした。先生の描く「すこし、ふしぎな」世界に魅せられました。当時漫画と同じように読み耽った、江戸川乱歩の『少年探偵』シリーズの怖い世界と相俟って、自宅の裏の山のどこかにタイムトンネルでもあるのではないか、自分の身にも「すこし、ふしぎな」ことが起きてくれないかと、本気で期待していたものでした。
殊に熱中し、いまだにことあるごとに熟読,精読を繰り返すのは、安孫子先生(藤子不二雄A)が描かれた『まんが道』です。『まんが道』は、約30年前NHKでドラマ化されました。その影響でさらに熱が上がり、父に頼んで、ドラマのロケーションが行われた、藤本先生の故郷であり、安孫子先生と出会った富山県高岡市へ、車で家族3人で旅行して、古城公園を歩いたり、高岡の大仏を訪れたりしました。藤子漫画は、家族の忘れられない思い出とも直結しています。
だから自分としては、他の藤子不二雄ファンとは違う。いっしょにするなという、ささやかな自負もあるわけです。まあ大した自負でもないですけどね。
この『まんが道』の影響があまりにも大きくて、1987年、お二人がコンビを解消するまで、どの藤子作品も二人で分担して描かれているものだと思い込んでいました。そういう意味では、世間知らずの、かなりうっかりした子どもだったわけです。まあ40を過ぎた今も、うっかりしているのは変わりませんが。
だけれども、とにもかくにも、寸分違わぬ絵が描ける藤本少年、安孫子少年の出会いと、お二人の友情の深さは、稀有なものであり、まさに奇跡でしかありえません。