昨年夏、鎌倉市役所前にある某所の現場に2~3回タイルの配達にいきました。
転校する中学3年の1学期いっぱいまで生まれ育ったのが鎌倉なので思い出深いというより、あまりにもいろいろな事がありすぎた複雑な感慨を覚える町です。
現場のある鎌倉駅西口(裏駅)側の御成通りには父の事務所がありましたが、もうひとつ忘れられないのが映画館です。
改札を出て向かって左側、コンビニのある場所にかつて「テアトル鎌倉」という映画館がありました。名画座かと思いきや、そうではなくその時の新作を上映する映画館でした。
想い返してみると小学生の頃に観た『ドラえもん』映画などのアニメや『101匹わんちゃん』のリバイバル。沢口靖子さん主演の『竹取物語』、市川崑監督の『ビルマの竪琴』、『ネバーエンディングストーリー』、『サウンド・オブ・ミュージック』『メリー・ポピンズ』のリバイバルを一日がかりでぶっ続けで観たり、『山下少年物語』のような今となっては少々マニアックな作品も観に行きました。
料金を払うと赤と青のフィルムでできた眼鏡をもらえ、それをかけると「立体映像」のキャラクターが画面から飛び出て見えるのに、子ども連れの親御さんたちも歓声をあげたりしていました。3Dなどと呼ばれるはるか昔のことです。
もっとも現在の映画館と違いトイレもかなり汚なくて、席もあまり上等なものではなかったので清潔感には欠けていましたが、料金も安くて観客の入れ替えなどもなく、2本立てでも1作分の料金さえ払えばずっと館内に居られる良い時代でした。
昔から鎌倉に住んでいる人の話によれば、駅前にはもっと映画館はあったようですが、残ったのがこのテアトル鎌倉で、91年頃にはここも長い歴史に幕を下ろすことになりました。
鎌倉は小津安二郎監督や女優の原節子さんが住んでいたりと、映画には深い縁のある町ですが、平成の初め頃鎌倉で生活をしていた人たちにとっては、このテアトル鎌倉こそが『ニューシネマ・パラダイス』だったと思います。
みなさんにも想い出に残る映画館はありますか?